2010年11月15日月曜日

エースであるということ。

栗原恵という絶対的エースを、事実上欠いた状態で迎えた今回の世界選手権。

木村沙織にかかる期待と重圧は、そして溜まりゆく疲労はどれほどのものだっただろう。

サービスで狙われ、ピンチの時こそたくさんのボールが上がってきて、その多くは苦し紛れで。

グループリーグの最終戦のロシア戦、ついに足が止まる。それはサーブカットができないことと同義。体勢を崩され、打つのは二段トスばかり。ジャンプ力は急激に衰えていく。

そして準決勝、ブラジル戦。2セット先取からの大逆転負けは、この蓄積された疲労が最大の原因であった。
そして、それでも同じように疲労した他の選手は、交代しながら、休みながら戦うことができた。しかし、それは「エース」という存在には絶対に許されない。
何があろうと、コートには立ち続けなければならない。

そして3位決定戦。
すでにジャンプして着地をすると、まともにバランスすら取れなくなっている。もちろんジャンプそのものも低く、ことごとくブロックに掛かる。
この疲弊したエースとともに、メダルは遠のくのか。

だが、そこから、「精神が肉体を越えていく」。
空中でバランスを崩しても、まともに打つことができなくても、必ずポイントを奪う。相手コートに落とさなくてもブロックアウトでいい。ワンタッチでもいい。ゾーンに入ったプレイヤーの凄みを感じることとなった。

その象徴が最終セットの10ポイント目。
レフトに上がったボールを強打。ブロックに当たって戻った二段トスを、再び強打。そしてそのボールがブロックに当たって宙に浮いたところ、そのままスタンディングジャンプからのダイレクトスパイクで決めてみせる。
3連続のスパイク。鳥肌が立った。

銅メダル、おめでとう。
これで栗原が完全復活すれば、ロンドンは。
期待せずにはいられない。

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